以前、うしとらが好きな会社の同僚と話したことがあった。
その際の私の言葉、
「今人気投票をやるなら、俺は断然工事現場の坂口さんに入れるね!」
相手は「本音は潮やとらの方が好きな癖にそんな事を!」と猛反発だったけれども、
自分としては本気の言葉だったりする。
そもそも潮だとかとらにカッコイイ場面が多いのは彼らが主人公だからであり、
カッコイイ場面でカッコイイ事を言って決めるのはいわば彼らに与えられた宿命だ。
そして彼らにはそれを貫くだけの力が与えられている。
かたや坂口さんは単なる脇役で、普通のおっさんである。
小夜や水乃緒のように異能者というわけでもないし、
詩織やミノルのように妖と縁があるわけでもない。
香上や片山のように潮達と深い縁を持ったわけでもない。
それどころか、タツヤや徳野のように妖のトラブルに巻き込まれてさえいない。
たまたま自分の仕事場で、潮達がガンガンバキバキしていたというだけである。
そもそも出番が2話しかないし、台詞も3つだけだ。
下手すれば、名前を覚えていない読者も多いかもしれない。
(前述の同僚には「工事現場の坂口さん」では通じなかった)
モブに毛の生えた程度の存在に過ぎない。
しかし、逆にそれだからこそ、彼の言動には魅力が溢れている。
彼の立場になって考えてみよう。
早朝に工事現場に出勤してみれば、目の前にうさんくさいバケモノどもが。
さらに現場がメチャクチャになっている。
近くの村で得体の知れない大量殺人事件が起きている事も思い当たったかもしれない。
その状況で、このバケモノ達が人間に無害な存在であると思うほうが無茶である。
実際、彼らを発見した現場の人々は、潮たちに投石攻撃(子供か!?)を仕掛けたり、
潮たちを重機で潰そうとしたり、警察を呼ぼうとしている。
この間に坂口さんがどういう行動をとっているかは不明だが、
少なくとも同僚達を敢えて止めようとはしていないだろう。
ガソリンに引火した時も同僚達と一緒に逃げようとしていた。
しかし、そこで潮が助けを求めた時に、坂口さんの数少ない出番が始まる。
「なんかこまってるみてーじゃねえか」
「オレは人間だからよ! 助け呼んでる者ほっとけねえって」
即座に逆走、潮たちを助けに走る。
同僚達も坂口さんに感化されたか救助活動に協力する。
普通なら考えられない行動である。
「全く得体の知れない連中を」「自分の命を危険にさらしてまで」
「助けを求められたという理由だけで助ける」
ここまでのことができたキャラが他の重要キャラやゲストキャラにどれだけいただろうか?
潮と共に人助けした連中には「己の弱さを乗り越える覚悟」だとか
「自分と関わりのある誰かを助けようとする決意」が背後にあるのがほとんどで、
坂口さんのように理屈も何もない「人情」ただそれだけで動くキャラは稀だった。
潮や麻子、真由子のようなメインキャラを除くと片山や香上くらいのものだ。
(ヤスは事情がなくても助けそうだが)
そう考えると坂口さんは潮にさえ劣らぬ人情と熱い魂の持ち主であるように思えてくるのである。
……考えすぎだろうか?